最新刊「花になるらん 明治おんな繁盛記」
京都の呉服商「高倉屋」のご寮人さん・みやび。女だてらに積極的に商売を拡げ、動乱の幕末から明治を生き抜いた女性の波瀾の人生を描く大河長篇。
玉岡かおる・原作の新作能「媽祖」。
‘22年4月、観世流シテ方の片山九郎右衛門さんによるクラウドファンディングで圧倒的な応援をたまわり、京都観世会館で上演されましたが、今度は’23年1月、小田原三の丸ホールにての上演。おかげさまで満席のお客様。
京都の再演というのではありません。今回は小田原での上演とあって、海の女神・媽祖が生まれる背景を小田原の海へ移し、(つまり太平洋へ!)物語を書き換えました。
京都版では、コロナ大流行中の執筆だったこともあり、天平時代に国を襲った疫病(おそらく天然痘)に苦しむ民を救うため、称徳帝が作らせた百万塔を西国へ運ぶための海の旅でした。その途上、慈愛の子・黙娘(もくじょう)という巫女が、人々を救うため媽祖という女神へと化身するドラマティックな能を片山九郎右衛門さんが豪華絢爛な舞で魅了してくれました。そこへ光臨する神は住吉の大明神。野村萬斎さんが神々しく演じられました。
今回の小田原版は、阪神淡路大震災の1/17が近いということもあって、今や日本のどこで起きても不思議でない天災をテーマに、やはり奈良時代、富士山の噴火で暗闇に包まれる小田原を舞台にストーリーを書き改めました。
世に光をもたらす春日の大明神を野村萬斎さんが、民をあまねく救う五輪塔を運ぶ黙娘〜媽祖を片山九郎右衛門さんが演じ、最後は圧巻の二人シテ舞。
媽祖はどんな場でも、またどんな時代にも表れる希望の女神として進化することを書いた台本でしたが、みごとにそれを舞台で見せていただけた幸せ。
さあ、次はどこの海で、媽祖は生まれ変わるのか。
まだまだ新作能「媽祖」は続きます。乞うご期待。